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合唱手帳

20・30代の合唱愛溢れるメンバーが「歌う楽しさ」を伝えるために立ち上げた合唱サイト。

上手い合唱団は個人練習が充実している

合唱指導者:小春うい

ーー成果は才能ではなく「やりきる力」と比例する

グリットという概念が注目されています。

 

ブームに少し遅れて私もその本を読みましたが、その中にドキッとする一文がありました。

 

「音楽家の場合も同様に、グループやほかの音楽家と練習するよりも、ひとりで練習する時間が多い人ほど、スキルの上達が早いことがわかっている」

 

他の人と一緒にする練習よりも一人で練習する時間の方が「次ここを改善してやってみよう」というような自発的な目的意識が生まれることから、スキル上達がしやすいというのです。

 

合唱の練習のほとんどが「誰かと一緒に歌う時間」

この一文を見てドキッとした理由は、合唱に当てはめたからです。

一般的に合唱は「ひとりで練習する時間」がほとんどない活動です。

 

活動の多くの時間が先生レッスン・全体練習・パート練習に締められます。発声練習も個人ではなく全体で行う団体がほとんどです。

団体競技という意識の強さからか、特に一般の団体では「練習に集まる」ということそのものが大変だからか、メンバーが集った中であえて個人練習の時間を設けることを「もったいない」と思ってしまいます。

 

また、「合唱は悪目立ちしやすい」ということも関係あるでしょう。

上手い人がどれだけ技術を磨いても、誰か一人が少し音が下がってしまったり、子音のタイミングがずれてしまうとそちらが目立って下手に聞こえる。そんな側面から、スポーツや演劇などと比べても、先輩が後輩へ技術を教える文化が色濃く根付いているように思います。

 

「みんなでうまくなりたい」「この人にうまくなってほしい」

そう思うからこそ、個人練習よりもマンツーマンの練習やパート練習・全体練習が増えていくのです。

 

成長は気付きと習慣化の掛け算

個人練習が少ないのは、裏を返せば先生や先輩が時間を掛けも「生徒に、後輩にうまくなってほしい!」と思っているから。このことは疑いありません。

 

ただ、成長を願うからこそ、個人練習の時間を取り入れた方がいいと私は思います。

 

それは、「成長」は「気付きと習慣化の掛け算」だからです。

 

合唱初心者が個人練習をして得られる気付きは、顧問の先生や先輩方から見てとても拙く感じられるかもしれません。

 

でも、気付きの定着には「どういう気付き方をするか」が深く関わっています。

人は気付いただけでは成長しません。気づいた瞬間に変わることはできないのです。変わるためには、何度も繰り返して練習してそれを習慣にしなければなりません。習慣とは、無意識に行えるということです。

 

新しい気付きを、いつでも無意識に行える習慣にするには、多量のエネルギーが必要です。


どんなにいい気付きでも定着させることができなければ宝の持ち腐れ。

それよりも、自分で気づいたことの方が自分の変化を引き出してくれます。

 

大きな気付きより、一歩先の気付き

個人練習で自発的に見つけ出した「こうしたら良くなるんじゃないかな」という気付きは、教えられた気付きよりも明確に具体的な行動のイメージが湧きます。その分、自分で意識しやすく習慣化もしやすいのです。

一つ一つの成長は小さくとも、積み重なれば大きな成長になります。

それは、大きな山を前にしてすくみ続けているより、ずっと「高みに近づく」ことなのです。

 

 

〈ライター:小春うい〉

日本語の歌唱を得意とする声楽家・合唱指導者。国立音楽大学卒業。基礎力を大切にした歌唱・指導が特徴。日本語音声学や朗読などを学び、知識を実践に結びつけることをライフワークとする。中学生から合唱を始め、NHK全国学校音楽コンクール全国大会出場。高校では合唱部を音楽的に推し進め、初出場で全日本合唱コンクール全国大会3位相当の特別賞を獲得した。大学生・社会人になっても合唱やアンサンブルを続け、海外演奏旅行や海外コンクールなどの経験を持つ。