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合唱手帳

20・30代の合唱愛溢れるメンバーが「歌う楽しさ」を伝えるために立ち上げた合唱サイト。

語感を、外国語では大切にするのに日本語で疎かにする日本人。

 

クラシック音楽の歌い手には、日本語以外の言語を歌うことに慣れている人が多くいます。


声楽であれば、まずイタリア語の曲をお勉強し、次にお勉強する言語として、多くの場合ドイツ語やフランス語が選ばれます。

合唱であれば、ラテン語もスタンダードな言語のひとつです。声楽で取り上げられるイタリア語・ドイツ語・フランス語はもちろん、合唱団の性質によってはマジャール語(ハンガリー語)を抵抗なく取り組む団もあります。

 

外国語を歌うには、勉強が必要

さて実際に日本の合唱団に、これらの言語の曲を歌う機会がやってきたらどう取り掛かるのかというと……

 

まず発音記号と逐語訳の資料を作成します。時にはネイティブスピーカーに歌詞を朗読していただいたり、その言語の専門家の指導を仰ぐこともあります。

練習時間の一部を発音の練習に割いて、発音や調子が自然になるよう目指します。その「自然」の中には、単語のニュアンスを表現できているかということも含まれます。「amore(イタリア語で愛)」ならば、情熱がこもった言い方ができているかということまで指導を受けることも多々あります。


日本語を歌うには、勉強は不必要?

一方、日本人が日本語(現代の共通語)を歌う場合、発音記号や逐語訳の資料を作成することはまずありません。資料がなくとも、一つひとつの単語の意味や発音が分からなくてそもそも歌えないという事態は起きないからです。

私たちは日本語のネイティブスピーカーなのですから、歌詞をすらすら読むことはお手の物です。


しかし、日本語の歌を歌うこともお手の物……とはいきません。


歌詞カードや歌詞のテロップなく、初めて聞いてすっと言葉がしみいる演奏がどれだけあるでしょうか。

合唱祭に行くと、歌詞が聞き取れない演奏や、頭の中で文字を繋げながら聞かないと内容が伝わってこない演奏があります。合唱コンクールの講評で「日本語の歌い方を研究しましょう」とか「ウが浅い」「サ行が気になる」「意味が伝わってこない」と指摘が飛ぶことも珍しくありません。ポップスにおいても、歌詞カードを見てはじめて、こう言っていたのか! と気付くことがあります。

 

日本語の語感……意識してる?

そうして、すっと言葉が入ってこない理由の一つは、言葉に語感がないことです。

「あ」「い」というのと、「愛」というのではニュアンスが違います。しかし、合唱人は「愛」を「あ」「い」と歌いがちなのです。

私たちは日本語のネイティブスピーカーです。自分の喋りを観察すればどう歌えばいいかの答えはあります。語感の練習をしてください。ぜひ、「愛」と歌えるようになってください。

 

 

 

〈ライター:小春うい〉

日本語の歌唱を得意とする声楽家・合唱指導者。国立音楽大学卒業。基礎力を大切にした歌唱・指導が特徴。日本語音声学や朗読などを学び、知識を実践に結びつけることをライフワークとする。中学生から合唱を始め、NHK全国学校音楽コンクール全国大会出場。高校では合唱部を音楽的に推し進め、初出場で全日本合唱コンクール全国大会3位相当の特別賞を獲得した。大学生・社会人になっても合唱やアンサンブルを続け、海外演奏旅行や海外コンクールなどの経験を持つ。