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合唱手帳

20・30代の合唱愛溢れるメンバーが「歌う楽しさ」を伝えるために立ち上げた合唱サイト。

発音を揃えるには見た目よりも中身が大事。顎を動かさずに歌う技術を身につけよ

ボディ・マッピング 合唱指導者:小春うい

 

解剖学の視点から歌い手の身体を読み解く連載。今回は「合唱手帳」編集部に変わり、小春ういが、音声学の視点をプラスしてお届けします。

 

見た目を揃えれば発語が揃う……?

「あ」は大きく口を開いて
「い」は唇を横に引っ張って
「う」は唇を前に突き出して
「え」は「い」よりも少し口を開いて
「お」は口の中に生卵を入れる感じ

鏡を見て口の形をチェック!!


皆さんはこんな風に母音を揃えようとしていませんか?

元気なニュアンスで歌いたいならこうして一つ一つの音色をハッキリ作ることは効果的です。しかし、これはしっとりした表現や色っぽさを出すためには逆効果。

「見た目で合わせた母音」は、どんな表現にも対応できるナチュラルな母音ではなく、既に表現に染まった母音なのです。

 

絵を描くなら白いスケッチブックがいい

……あなたの前に、「真っ白なスケッチブック」と「全ページラメ付きのスケッチブック」「薄く柄が入った紙のスケッチブック」があるとしましょう。

気に入った風景を描くために旅に出ようという時に、スケッチブックを1冊選ぶなら、真っ白なスケッチブックを選ぶでしょう。全ページラメ付きのスケッチブックや、薄く柄が入ったスケッチブックではなくて。


顎を動かして歌うことがデフォルトということは、全ページラメ付きのスケッチブックを持っているようなものです。

勝利のシーンや、達成したシーン、とても楽しいシーンを描くのには強い味方になりますが、負けて落胆したシーン、苦難にどうにか耐えているシーン、愛する人が亡くなったシーンには邪魔になります。

 

で、ナチュラルな母音って……?

ならどうすればナチュラルな母音になるの?

ということを考えて見るために、「私は今日、学校に行きました」という言葉を、以下それぞれの指示に従って喋ってみてください。

 

1. 顎を動かさずに

いかがですか? 

言い難くはあるものの、どうにかチャレンジしてみることはできたと思います。

 

2. 唇を動かさずに

いかがですか? 

顎を動かさない場合よりも難しいですが、どうにか言い切ることができたのではないでしょうか。

 

3. 舌を動かさずに

いかがですか? 

こちらは……「不可能」ではないでしょうか。顎と唇だけを使って言おうとしても、舌がピクピクと動いてしまいます。その上、1番、何を言っているか分かりづらいゴニョゴニョした喋りにしかなりません。

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「顎や唇は動かさずに喋ることはどうにかできたけど、舌を動かさずには喋れなかった」のではないでしょうか。

このことから分かるように、言葉の素ー喋るということを極限まで省エネすると残るものは、「舌の動き」です。

 

続いて、「顎を動かさずに舌の動きを生かして歌う技術」の練習法をお伝えします。

 

「動かさない」ために鏡を使おう!

「顎を動かさずに舌の動きを生かして歌う技術」を身に付けるためには、鏡を見ましょう。

口が動いているかの確認ではなく、顎がカクカク動いていないかの確認してください。その上で、言葉を犠牲にしても顎を動かさないことを意識して歌いましょう。

最初は、ほとんど言葉が分からないと思います。けれど、続けるうちに舌が滑らかに正確に動くようになり、だんだんと言葉が分かるようになってきます。

そうして舌の動きが滑らかになれば、どんな表現にも対応できる基礎が整うでしょう。

 

ぜひチャレンジしてみてください! 

 

 

 

〈ライター:小春うい〉

日本語の歌唱を得意とする声楽家・合唱指導者。国立音楽大学卒業。基礎力を大切にした歌唱・指導が特徴。日本語音声学や朗読などを学び、知識を実践に結びつけることをライフワークとする。中学生から合唱を始め、NHK全国学校音楽コンクール全国大会出場。高校では合唱部を音楽的に推し進め、初出場で全日本合唱コンクール全国大会3位相当の特別賞を獲得した。大学生・社会人になっても合唱やアンサンブルを続け、海外演奏旅行や海外コンクールなどの経験を持つ。