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合唱手帳

20・30代の合唱愛溢れるメンバーが「歌う楽しさ」を伝えるために立ち上げた合唱サイト。

初出場全国3位は「どこを改善したらもっと良くなるだろう?」の文化があったから

コンクール 体験談 合唱指導者:小春うい

こんにちは、小春ういです。

 

今回は、高校2年生の時、初出場で朝日コンクール全国大会特別賞入賞を果たしたときのお話をしたいと思います。

 

正式に部活になってわずか3年目

私の通った高校には合唱部はありましたが、同窓会から部活になりたてでコンクール出場経験はありませんでした。

そんな中、私が高校2年生の時に、全国大会を目指して「全国合唱コンクール(通称:朝日)」と「NHK全国音楽コンクール(通称:Nコン)」に初出場。

 

しかし、顧問の先生は合唱初心者、部員は高校1年と2年のみ。練習時間もたっぷりとあったわけではありません。その後メンバーは増えましたが、県大会は9人での出場でした。その他の点で恵まれていた点はありましたが、全国常連校に比べれば不利な状況です。

 

そんな中、私たちは初出場で全国大会に出場、しかも部門3位に相当する特別賞までいただきました。

 

その勝因を今振り返るなら、それは並々ならぬ「自主性」だったと思います。

 

私たちは歌わされているんじゃなくて、自分たちで歌っているんだ! そしてこの点で私たち以上に勝っている学校なんてない!

 

と、自分たちの置かれた「頼れるプロが身近にいない」ということを強みとして原動力に変えられたとと。これが私たちの勝因です。

 

自分たちの課題が分からなかった

繰り返しになりますが、私たちの身近には、目指すべき音楽や精進の方法を示してくれるプロがいませんでした。

 

それでも上を目指すには、自分で自分の課題に気付くしかありません。

 

しかし、当時の私たちは「上手い合唱ってどんなものか」すらあやふやで、自分たちに足りないものが何かさえ分かっていませんでした。

 

そのために、最初の頃はもっぱら課題の探し方に時間を費やしました。

 

・順番に前に立って改善点と思しきものを述べる

・各パート1人で歌ってみて、聞き手が感想を述べる

・録音して、みんなで聞いて、改善点と思しきものを発表する

・ビデオカメラで録音して、見栄えまでチェックする

・過去の『ハーモニー』*の全国大会の講評を読み込んで審査員の目線を洗い出してみる

*ハーモニー:全日本合唱連盟の会報。毎年、全国大会を審査した審査員による座談会が掲載される

・常連校の自由曲と同じ曲に取り組み、その常連校の強さを分析する

 

など……とにかく思いつくことを片っ端から試しました。

 

すぐに効果が感じられたものもあれば、労力に見合うだけ血肉が付いたか不安なものもあります。ただ、この期間に私たちの「聴く力」が成長し、また「練習の型」が生まれたのは確実です。

 

誰もが改善点を探した

練習の型が決まったのは県大会2週間前頃でした。

 

練習時は、誰か一人が前に出て「こうした方がいいんじゃない?」という指摘をする形で行うことが基本になりました。前に出た人が気付けることを言い尽くしたら、次の人に交代。その役は学年に関係なく回ってきます。

加えて、個人練習の時間が比較的多かったことと、毎回録音していたことが特徴でした。

 

そのような練習スタイルは、誰もが「自分はどこを改善したらもっと良くなるだろう?」「自分が何を発言したら全体がもっと良くなるだろう?」と考える土壌となりました。言われたことをこなすのではなく、自分で改善点を探す。誰も何も言ってくれない環境にあって上を目指すには、これしか手段がなかったのです。

 

課題の発見した1時間後には、みんながエキスパートに

また、ひとつひとつの課題を、誰もが確実にできるようになるまで時間を掛けました。全員が理解し・納得し・実行できるようになるまでどれだけでも時間を掛けました。

 

「Kyrie」の「き」の発音をどうすべきかを1時間突き詰めたこともありました。

 

誰かが、「揃ってないよね」と言えば、私たちが歌う「き」をどのようなものにするのかを決める話し合いのスタートです。

 

一人ひとり歌ってみて、「私はAさんの発音がいいと思う」「いや、Bさんの方がこのシーンにはあってると思う」とそれぞれが思うベストを言い合います。そこで「良さそう」という意見が出た全ての案をみんなで歌って試してみて、音楽にハマりがいい発音を決めます。

だいたい「AさんとBさんの間くらいがいいね」という風に複数の案からいいとこ取りをしたものに落ちついて、発音が決まり。

 

次は、全員が同じ発音ができるようになるまで練習します。一人づつ歌ったりパートごとに歌ったりするのを、「なんかまだ発音がバラバラに聞こえるね。Yさんちょっと強すぎない?」などとみんなでチェックして磨きを掛けます。

 

そうしているうちにあっという間に60分。一瞬の発音ためにこれだけの時間を掛けることがしばしばでした。

しかし、これだけやれば、誰もがそのエキスパートになれました。

 

ここまでたっぷり時間を掛けられたのは紛れもなく、私たちが気づけた「課題」が少なかったことの裏返しです。

「あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ! やりたいことが多くて時間が足りない!」と時間配分を焦るほど多くの課題には気付けなかったのです。

 

愚直さだけが取り柄だった私たち

実は、私たちがコンクールで歌った自由曲はとても簡単な曲でした。女声3声でディビジョンも無し。人数の少ない中学校が自由曲に選ぶような曲です。中学校の県大会ではよく見かけるけど、全国ではあまり見かけないような取り組みやすい曲でした。

 

それを私たちは高校生で取り組んで、全国3位を取りました。

人数が少なくても、全国大会という場に不釣合いなほど簡単な曲でも、プロが身近にいなくても、私たちはコンクールで十分に戦うことができました。

 

それは、自分たちで見つけた道を愚直に突き進んだからだと思います。

 

自分たちの道を見つけてください

今、中学校や高校の合唱部にお邪魔すると、こう言われることがあります。

 

「人数が少ないから、コンクールでいい成績が取れません」

 ーー 大丈夫です、人数が少なくてもいい演奏ができます。 

 

「難しい曲ができなくて、コンクールでいい成績が取れません」

 ーー 大丈夫です、私が高校生の時に歌った自由曲より難しいです。 

 

先生が「私の技術が足りないから、コンクールでいい成績が取れません」

 ーー 大丈夫です、少なくとも高校生の頃の私より技術があります。

 

 

たしかに、「人が多いこと」や「難曲に取り組むこと」「強い先生がいること」は、コンクールで結果を残す部活の傾向です。しかし、それが全てではありません。

 

ただ、強豪校と同じような王道を進んでも勝てはしないということは確実です。彼らの練習の真似をして彼らを越すことはできません。

 

自分たちの道を見つけてください。

 

 

私たちの経験が、その参考になれば幸いです。

 

 

〈ライター:小春うい〉

日本語の歌唱を得意とする声楽家・合唱指導者。国立音楽大学卒業。基礎力を大切にした歌唱・指導が特徴。日本語音声学や朗読などを学び、知識を実践に結びつけることをライフワークとする。中学生の時、NHK音楽コンクール全国大会出場。高校では合唱部を音楽的に推し進め、初出場で全日本合唱コンクール全国大会3位相当の特別賞を獲得した。大学・社会人になっても合唱やアンサンブルを続け、海外演奏旅行や海外コンクールなどの経験を持つ。

 

ネットで合唱譜を選ぶとき、どのサイトを見たらいいの?

楽譜を買うときには2つの場合があります。取り組む曲は決まっていてただ買えばいい場合と、取り組む曲を探すために楽譜を買う場合。

今回は、取り組む曲を選ぶためにオススメのサイトをお伝えします。


合唱人の王道「パナムジカ

ネットで合唱譜を選ぶなら、一にも二にも「パナムジカ」がオススメです。

合唱楽譜の専門店と銘打っているだけあって、国内外の出版社が出している合唱作品を豊富に取り扱っています。

詳細検索を用いれば声部や伴奏・言語を指定して検索することもでき、所属合唱団で演奏できる楽曲に絞って検索できます。

※検索オプション、それぞれの内訳
声部(混声/女声/男声)
伴奏(ピアノ/オルガン/アカペラ/その他)
言語(日本語・英語・ラテン語をはじめとする37の選択肢)

 

 「立ち読み」機能で楽譜を覗ける

パナムジカで候補楽曲を見つけたら、次は各出版社のサイトを訪ねてみましょう。
「立ち読み機能」が付いていて中身を見ることができる場合があります。以下、その一例をご紹介します。

 

・「カワイ出版

所々「Sample」という文字で覆われていますが、アレンジの概観をつかむことができます。

 

・「音楽之友社

全てのページを「Sample」表記もなく見ることができます。実際に手に取って選ぶのと限りなく近い状態で楽譜の試し読みができます。

 

ポップス楽曲なら「エレヴァートミュージック

文化祭や学校講演などのためにポップス系の楽曲をお探しの方はこちらのサイトもオススメです。

エレヴァートミュージックという出版社が自身の楽曲を販売するサイト。こちらの立ち読み機能は1ページだけですが、参考音源の視聴が可能です。

合唱人に著名な先生方が編曲された楽曲もありますので、合唱ガチ勢にも一見の価値アリです。

桜田直子先生:『愛の賛歌』『』など
信長貴富先生:曲集『朝ドラ!』『島唄』など
北川昇先生:『男はつらいよ』『なごり雪』など
田中達也先生:『ウイスキーが、お好きでしょ』『麦の唄』など


「パナムジカ」→出版社の自社サイト

楽譜は本来であれば手にとって選びたいものですが、近くに合唱譜を揃えた楽器店がなかったり、とてもニッチなジャンルの楽譜を探していて店頭の品揃えでは不十分だったりしすると、やはり「ネットで楽譜を選ぶ」という選択肢を取ることになります。

そんなときにはまず「パナムジカ」。そこで良さそうな楽曲を見つけたら出版社の自社サイトでサンプル楽譜や参考音源がないかチェックしてみる。この流れで探すことがオススメです。

 

「合唱手帳」編集部でした。

 

「練習中:本番はできるはず」「本番中:できるはずのことができない」本番恐怖症だった頃

合唱指導者:小春うい

 

こんにちは、小春ういです。

 

ーー私には、本番恐怖症だった時期がありました。

 

練習大好き。本番怖い。

練習は毎回成長感があって楽しいけど、本番は緊張して自分をうまくコントロールできないから嫌だ。

強がって「人前で歌うとかじゃなくて、歌ってることそのものが好きなの」という言い方をしたこともありました。


「できるはずのことができない」

本番恐怖症だった頃は、パブロフの犬さながら「本番」と「緊張」が条件反射で繋がれている状態でした。梅干しを想像すると唾が出るように、どれだけ準備できたかに関わらず本番といえば緊張。

とはいえ、私は生まれながらの緊張しいではありません。もともとは「緊張? なにそれ?」でした。

 

そんな私が緊張するようになった最初の一歩を振り返ると、「できるはずのことができない」が積み重なったから。

それは、音がハマらない、ブレスがもたない、ビブラートが大きい、テンポキープができない……という小さな「技術的なできない」。それが時間とともに積み重なり「歌いたい音楽が表現できなかった」という大きな「できない」に成長しました。

 

「できるはずのことができない」と思い続けたことが私の本番恐怖症の原因です。


「そりゃ、できるわけない」

しかし、あるとき気づきました。


本番「できなかった」ことのほとんどが、練習で百発百中のものではなかったんです。

 

練習で「できた!」と思うのはだいたい集中して取り組んだ時。できるかできないか分からないことにチャレンジするから「できた!」と思うのです。それは、子供は「エスカレーターに乗れた!」と達成感を覚えても、大人は「エスカレーターに乗れた!」という感想があることすら忘れてしまうようなものです。

 

このように考えると、「できた!」と思う対象の「できること」は「集中すればできること」「調子がよければできること」にすぎません。それなのに、私はそれをを「本番でできるはずのこと」と捉えていたのです。

 

練習というリスクのない状況で百発百中できないことが本番で百発百中できるわけはありません。「できるはずのことができない」は当たり前だったのです。

 

百発百中のものしかできない

それに気付いて、私は「本番はこのくらいの演奏ができるかな」というラインを引き下げました。練習では「今はいいや」と思うことを辞めました。喉を気にして高い音を抜いて歌ったりとか、多少のズレを今集中してないからって言い訳して見過ごすこととか。

 

すると、「できるはずのことができない」は見違えるほど少なくなり、本番で歌うことを自由に感じられるようになりました。

 

歌は、きっと音楽の中で最も精神状態に左右される表現手段です。だからこそ本番で緊張してしまう人も多いと思います。そんな方の参考になれば幸いです。

 

 

 

〈ライター:小春うい〉

日本語の歌唱を得意とする声楽家・合唱指導者。国立音楽大学卒業。基礎力を大切にした歌唱・指導が特徴。日本語音声学や朗読などを学び、知識を実践に結びつけることをライフワークとする。中学生から合唱を始め、NHK全国学校音楽コンクール全国大会出場。高校では合唱部を音楽的に推し進め、初出場で全日本合唱コンクール全国大会3位相当の特別賞を獲得した。大学生・社会人になっても合唱やアンサンブルを続け、海外演奏旅行や海外コンクールなどの経験を持つ。

 

合唱人のよくある癖20選

合唱指導者:小春うい

 

こんにちは。小春ういです。

先日、清水ひなたさんが合唱人の癖についてお話されていました。

これに合わせて、合唱人のよくある癖一覧をお届けします!


見た目の癖10選

1. メロディーに合わせて体が揺れる

2. 単語ごとに頭が揺れる

3. 息を吸う時に口が大きく開く

4. 手や足がメトロノーム代わりにテンポを刻む

5. フェルマータと次の歌い出しの間に指揮者を睨む

6. タイミングを合わせようとして眉が上下する

7. 言葉をハッキリと思うと顎がパクパクする

8. 息が少なくなると身体がしぼむ

9. 第5音を歌うときにキラキラ顔になる

10. 第3音を歌うときに困り顔になる

 

聞こえる癖10選

11. 歌い出しでしゃくる

12. 母音がすべて声門閉鎖になる

13. ブレスの時に息の音が鳴る

14. カンニングブレスでも息の音が鳴る

15. とにかく子音を強く発音する

16. 子音を届かせようと思って子音を長くする

17. 長い音を歌っているときに拍を数えるのを忘れる

18. リズムを立てようと思うととにかく音符を短くする

19.ブレスが続かない曲に限ってもたつく

20. 普通のソからシの間でひっくり返る

 

 


いくつ当てはまりましたか。

 

歌には、「上手く歌う」という側面と「伝えるために歌う」という側面があります。

そして、「上手く歌う」だけではつまらない歌になりますが、伝えようと思っても「上手く歌う」の要素がなくては伝えたいものを伝えることはできません。

「上手く歌う」と「伝えるために歌う」は車の両輪のような関係です。

 

上記の癖は、まだ「上手く歌う」ことが未熟な人にとっては有効な手段かもしれません。しかしある程度上手く歌えるようになって、更にその上を目指すなら足かせになってしまうこともあります。

 

それぞれのレベルに合わせて使い分けてください!

 

 

 

〈ライター:小春うい〉

日本語の歌唱を得意とする声楽家・合唱指導者。国立音楽大学卒業。基礎力を大切にした歌唱・指導が特徴。日本語音声学や朗読などを学び、知識を実践に結びつけることをライフワークとする。中学生から合唱を始め、NHK全国学校音楽コンクール全国大会出場。高校では合唱部を音楽的に推し進め、初出場で全日本合唱コンクール全国大会3位相当の特別賞を獲得した。大学生・社会人になっても合唱やアンサンブルを続け、海外演奏旅行や海外コンクールなどの経験を持つ。

 

精一杯の笑顔なのに、明るい人と思ってもらえない友達。

マナーアドバイザー:清水ひなた 表情

 

友達が困った顔をしていると、「どうしたの?」と心配になります。

 

けれど、私には「困った顔をしていても心配にならない友達」がいます。

それは、私がその友達を嫌いだから、困った顔をしているのが気にならないというのではありません。

 

その友達は、普段の顔つきが困った顔だからです。

困った顔がデフォルトだから、困った顔をしていても「いつもの顔」と見過ごします。初対面の頃は、お会いするごとに「大丈夫かな?」と思っていましたが、何度もお会いする度に慣れたのです。

 

 

しかし、彼女は今も、初対面の方には「大丈夫かな?」と心配されていることでしょう。

彼女なりに初対面の方に好意を表すべく精一杯笑ったとしても、笑顔と笑顔の隙間に困り顔が除きます。そんな彼女の癖を捉えて、初対面の人は彼女に「何か落ち込んでいるのかな?」と心配するのです。

 

癖とは怖いものです。

友達は「今日も精一杯笑顔で頑張った」と思っているし、実際お相手と過ごした時間のうち9割8分ほど笑っていたでしょう。それでも、お相手は2%を捉えて、彼女に明るい印象は抱かないのです。

 

それは、人が普通ではない要素に敏感に反応するように進化してきたからです。

 

人は、人類の歴史からいえばそのほとんどを野生で暮らしています。危機から逃れることを優先順位の高いところに置いて生きていたということです。「今この瞬間殺されるかもしれない」と思わなくなった現代でもその習性は残っています。

 

生き延びるためには、自分に害を及ぼすかもしれない要素に敏感にならなくてはなりません。

その自分に害を及ぼすかもしれない要素とは、見慣れない動作や、これまでに感じたことのない感覚です。

 

癖とは、一般的ではない動作のこと。癖も、この見慣れない動作や感覚に含まれるのです。

 

癖があると伝えたいことをくもらせる

人前で歌われる歌は、何かを伝えるために歌われるものです。

歌いたいという思いの「発散」が目的ではありません。

 

とすると、歌はお相手を特定の感情に集中させることと言い替えられます。

 

宗教曲なら、静かで真っ直ぐな気持ちに。

希望を歌う曲なら、キラキラした気持ちに。

悲哀を歌う曲なら、少し重たい気持ちに。

 

 

しかし、その時に

 

テンポをキープするために手が動く癖があったり、

高い音を歌う時に眉をひそめる癖があったり、

音が変わる時にしゃくる癖があったりすると、

 

伝えたいことは伝わりにくくなります。

 

 

宗教曲を歌う時にこうした癖が出たとしたら、「静かでまっすぐな気持ち」になれるでしょうか。

合唱団が無駄な動きなく歌っていた方が、聞き手も「静かでまっすぐな気持ち」になりやすいはずです。

 

 

癖を取ることは容易いことではありません。毎日の積み重ねが必要です。けれど逆にいえば、毎日積み重ねることさえできれば癖を取ることができます。

「発散としての歌」ではなく、「表現としての歌」がうまくなりたいなら、上記のような癖がないかたしかめてみましょう。

 

 

 

〈ライター:清水ひなた〉

マナーアドバイザー・お話の仕方講師として活動する。要点と本質の分かりやすい説明に定評がある。言葉遣いだけでなく、発声や表情・間の取り方など非言語コミュニケーションについても伝える。中学生の頃から現在に至るまで継続して合唱活動を続けている。

 

語感を、外国語では大切にするのに日本語で疎かにする日本人。

合唱指導者:小春うい 発語

 

クラシック音楽の歌い手には、日本語以外の言語を歌うことに慣れている人が多くいます。


声楽であれば、まずイタリア語の曲をお勉強し、次にお勉強する言語として、多くの場合ドイツ語やフランス語が選ばれます。

合唱であれば、ラテン語もスタンダードな言語のひとつです。声楽で取り上げられるイタリア語・ドイツ語・フランス語はもちろん、合唱団の性質によってはマジャール語(ハンガリー語)を抵抗なく取り組む団もあります。

 

外国語を歌うには、勉強が必要

さて実際に日本の合唱団に、これらの言語の曲を歌う機会がやってきたらどう取り掛かるのかというと……

 

まず発音記号と逐語訳の資料を作成します。時にはネイティブスピーカーに歌詞を朗読していただいたり、その言語の専門家の指導を仰ぐこともあります。

練習時間の一部を発音の練習に割いて、発音や調子が自然になるよう目指します。その「自然」の中には、単語のニュアンスを表現できているかということも含まれます。「amore(イタリア語で愛)」ならば、情熱がこもった言い方ができているかということまで指導を受けることも多々あります。


日本語を歌うには、勉強は不必要?

一方、日本人が日本語(現代の共通語)を歌う場合、発音記号や逐語訳の資料を作成することはまずありません。資料がなくとも、一つひとつの単語の意味や発音が分からなくてそもそも歌えないという事態は起きないからです。

私たちは日本語のネイティブスピーカーなのですから、歌詞をすらすら読むことはお手の物です。


しかし、日本語の歌を歌うこともお手の物……とはいきません。


歌詞カードや歌詞のテロップなく、初めて聞いてすっと言葉がしみいる演奏がどれだけあるでしょうか。

合唱祭に行くと、歌詞が聞き取れない演奏や、頭の中で文字を繋げながら聞かないと内容が伝わってこない演奏があります。合唱コンクールの講評で「日本語の歌い方を研究しましょう」とか「ウが浅い」「サ行が気になる」「意味が伝わってこない」と指摘が飛ぶことも珍しくありません。ポップスにおいても、歌詞カードを見てはじめて、こう言っていたのか! と気付くことがあります。

 

日本語の語感……意識してる?

そうして、すっと言葉が入ってこない理由の一つは、言葉に語感がないことです。

「あ」「い」というのと、「愛」というのではニュアンスが違います。しかし、合唱人は「愛」を「あ」「い」と歌いがちなのです。

私たちは日本語のネイティブスピーカーです。自分の喋りを観察すればどう歌えばいいかの答えはあります。語感の練習をしてください。ぜひ、「愛」と歌えるようになってください。

 

 

 

〈ライター:小春うい〉

日本語の歌唱を得意とする声楽家・合唱指導者。国立音楽大学卒業。基礎力を大切にした歌唱・指導が特徴。日本語音声学や朗読などを学び、知識を実践に結びつけることをライフワークとする。中学生から合唱を始め、NHK全国学校音楽コンクール全国大会出場。高校では合唱部を音楽的に推し進め、初出場で全日本合唱コンクール全国大会3位相当の特別賞を獲得した。大学生・社会人になっても合唱やアンサンブルを続け、海外演奏旅行や海外コンクールなどの経験を持つ。

 

審査員は視てなくてもお客さんは視てる。合唱の外見。

マナーアドバイザー:清水ひなた 表情

「本番前だからエステに行かなきゃ」

 

こう言う声楽家や演劇の人に出会ったことはあっても、こう言う合唱人に出会ったことはありません。

 

「本番前だから姿勢を気をつけなきゃ」

「本番前だから痩せなきゃ」

 

そういう人の率も、合唱人には少ないように思います。

 

合唱の方々、見た目の影響力をどれほどに感じていますか?

今回は、マナーアドバイザーの清水ひなたが外見の大切さについてお伝えします。

 

言葉よりも表情から真意を読もうとする

第一印象は0.5秒で決まるといわれています。その第一印象にはどんな要素がどのくらい影響を与えるのかということを示す「メラビアンの法則」というものがあります。

 

第一印象に与える影響

1. 視た印象:姿勢や表情や服装や立ち振舞など 55%

2. 聴いた印象:音量や音色など        38%

3. 内容:具体的な情報              7%

 

たとえば、「元気だよ!」と肩の落ちた姿勢と暗い表情で言う人を見ると私たちは心配になります。

それは、「内容」よりも「視た印象」が優先された結果といえるでしょう。

 

反対に、「あんまり元気じゃない」と弾ける笑顔で言われたら、私たちはあまり心配になりません。

これも、「内容」よりも「視た印象」が優先されているからといえるでしょう。

 

視た印象の重要さがお分かりいただけたかと思います。

 

コンクールでは審査員が「視てない」。だから外見は比較的評価されない

歌においても、外見は本当に大切です。

どんなに上手くても明るい歌や激しい恋の歌を真面目な顔で歌っていたら効果半減です。

穏やかな宗教曲を弾ける笑顔で歌うのも違和感が生まれます。

 

とはいえ、コンクールを合唱活動の主軸としているとそうは感じにくいかもしれません。

 

コンクールにおけるメインのお客さまである審査員はあまり「視ていない」からです。

その審査員は耳がとても鍛えられています。そのため、普通の人よりも視覚より耳に重点を置いて合唱と接します。

また、審査員は演奏中に楽譜を見たり、講評用紙に講評を書き込んだりします。そのため合唱を視ている時間は比較的少なくなります。

この2点から、コンクールの審査員はそれほど見た目を気にしないといえます。

 

しかし、演奏会は別です。

演奏会は合唱を聞くプロばかりではなく、普段合唱を聞かない方もいらっしゃいます。また、集中して演奏を聞きにいらっしゃいます。視線はほとんどの時間舞台に注がれます。

そんなとき、外見の重要度は増します。

 

外見は歌ではなく表現のために

発声のでやすさのために顔を歪める。

高音を出すために少ししゃがむ。

そんな、表現に不必要な動きをしているともったいないです。

 

歌のためではなくて、表現のために外見を使いましょう。

その時の表現に合わせて体の緊張度や視線をどこに置くか調整してみると、それだけで演奏の雰囲気変わるはずです。

 

演奏時の見た目。ぜひ気をつけてみてください。

 

 

 

〈ライター:清水ひなた〉

マナーアドバイザー・お話の仕方講師として活動する。要点と本質の分かりやすい説明に定評がある。言葉遣いだけでなく、発声や表情・間の取り方など非言語コミュニケーションについても伝える。中学生の頃から現在に至るまで継続して合唱活動を続けている。